CHAPTER 3

STORY OF THE FUTURE

未来のIoTストーリー

203x年28歳 独身男性の1日

朝起きて家を出るまで

現時点では、スマートフォンで操作しているIoT機器は、スマートスピーカーの発展型のようなロボットが代替しています。

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自動でカーテンが開き、窓から太陽の光が差し込む。ぼくの1日はいつも心地よい目覚めから始まる。 こんがり焼いたトーストと熱いコーヒーが、ぼくの朝食の定番だ。「おはよう」AIコンシェルジュのKeiに話しかけて食材の在庫と賞味期限を冷蔵庫のドアスクリーンに表示させる。食パンの賞味期限が切れそうなので買い物リストに入れておいた。 満員電車に揺られて通勤するスタイルはなくなり、「WS(ワークスペース)」とか「WB(ワークベンチ)」と呼ばれている共有の場所が、ぼくたちの仕事場になっている。 ここから徒歩10分以内の場所にある。

過去に政府主導で働き方改革というのをやっていたようだが、そもそも通勤がもっとも効率が悪いのをわかっていて誰も手を打たなかった。そこに目を付けた大手の通信会社が土地と建物を買収。通信環境とシェアオフィスを格安で貸し出す事業を始めた。それが発端となり他の企業もこぞって参入し都市で働く人の環境が瞬く間に一変したのだ。土地や建物がないと成立しない話なのだが、タイミングがよかったんだと思う。
まさか日本の人口が予想よりも遥かに早く9000万人を割り、ここまで空き家が増えるなんて考えもしなかったのだから。朝のトップニュースを仮想スクリーンに投影させる。テレビや新聞というマスメディアはなくなり、すべてネットに変わった。ディスプレイ装置よりも仮想スクリーンや壁、窓ガラスに投影してニュースや株価のガジェットを自分好みにレイアウトして表示させる。そんな使い方が普通になっている。

家電のみならず、壁やガラスなどの建材にもIoTを搭載し、スマートフォンの代わりをしてくれると予想しています。

家電のみならず、壁やガラスなどの建材にもIoTを搭載し、スマートフォンの代わりをしてくれると予想しています。

過去に政府主導で働き方改革というのをやっていたようだが、そもそも通勤がもっとも効率が悪いのをわかっていて誰も手を打たなかった。そこに目を付けた大手の通信会社が土地と建物を買収。通信環境とシェアオフィスを格安で貸し出す事業を始めた。それが発端となり他の企業もこぞって参入し都市で働く人の環境が瞬く間に一変したのだ。土地や建物がないと成立しない話なのだが、タイミングがよかったんだと思う。
まさか日本の人口が予想よりも遥かに早く9000万人を割り、ここまで空き家が増えるなんて考えもしなかったのだから。朝のトップニュースを仮想スクリーンに投影させる。テレビや新聞というマスメディアはなくなり、すべてネットに変わった。ディスプレイ装置よりも仮想スクリーンや壁、窓ガラスに投影してニュースや株価のガジェットを自分好みにレイアウトして表示させる。そんな使い方が普通になっている。

将来的には健康管理もAIが行い、そのインターフェイスはIoTを組み込んだ設備機器になると予想しています。

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洗面所で歯を磨き顔を洗う。仕上げに鏡の前で舌を出しイメージスキャンをする。床に敷いてあるマットは体重や体脂肪率、血圧、脈拍を瞬時に測定してくれる。たったこれだけで健康診断ができるのだという。
オールグリーン、異常はないようだ。この頃、体重が少し増えてきたのが気になるところだ。

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そろそろ出かける時間だ。洗面所でクリーニングしていたコンタクトレンズを鏡の前で装着する。スマホは今やこのコンタクトレンズの形をした通称「AI-Lenz」に変わった。以前はウェアラブルデバイスと呼ばれていたアイテム(AI-tem)だ。扱いは簡単で目の前にメニューが表示され音声で命令するだけ。慣れている人なら声も出さずに操作ができる。人間は単語を頭に思い浮かべるだけで顎の筋肉に電気シグナルが伝わるらしく、それをセンサーで読み取るんだとか。レンズのどの部分で読み取っているのか詳しいことはよくわからない。海外では眼球の水晶体にレンズを埋め込んだり、頭に電極を埋め込む「ウェット」が流行っているようだが、ぼくは痛いのが苦手なので遠慮したいところだ。 傘立ての表示が晴れになっている。雨の心配はなさそうだ。忘れ物はないというメッセージがレンズに表示される。買い物リストの食パンを注文確定。家の鍵は外に出た時点でKeiが施錠してくれる。

ウェアラブルデバイスは進化し、体のIoT、つまりIoB( Internet of Bodies)になると言われています。

ウェアラブルデバイスは進化し、体のIoT、つまりIoB( Internet of Bodies)になると言われています。

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そろそろ出かける時間だ。洗面所でクリーニングしていたコンタクトレンズを鏡の前で装着する。スマホは今やこのコンタクトレンズの形をした通称「AI-Lenz」レンズに変わった。以前はウェアラブルデバイスと呼ばれていたアイテム(AI-tem)だ。扱いは簡単で目の前にメニューが表示され音声で命令するだけ。慣れている人なら声も出さずに操作ができる。人間は単語を頭に思い浮かべるだけで顎の筋肉に電気シグナルが伝わるらしく、それをセンサーで読み取るんだとか。レンズのどの部分で読み取っているのか詳しいことはよくわからない。海外では眼球の水晶体にレンズを埋め込んだり、頭に電極を埋め込む「ウェット」が流行っているようだが、ぼくは痛いのが苦手なので遠慮したいところだ。 傘立ての表示が晴れになっている。雨の心配はなさそうだ。忘れ物はないというメッセージがレンズに表示される。買い物リストの食パンを注文確定。家の鍵は外に出た時点でKeiが施錠してくれる。

IoTのセンサーで常にモノは監視され定量化される時代になると予想しています。また、仮想と現実がよりリアルに融合する世界になるでしょう。

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WSエリアに入るとセンサーが感知して会社に出勤情報が送信、自動記録される。 出社してまずは今日1日のタスクを確認する。スキルとテーマに応じて社員の自動マッチングが行われ「チーム」が編成される。部署とかプロジェクトに相当するものだ。チームは長い期間だと数年、早くてその日に解散する場合もある。メールのチェックも忘れてはいけない。メールは基本的に音声データで入っているが、すべて聞くと時間がかかるので文字変換して必要な箇所だけ読むようにしている。WEBコンテンツ制作がぼくの仕事だ。昔のインターネットは2次元の動画やコンテンツが中心だったけど今は3次元になっている。現実と仮想を重ね合わせて映像を見せるやり方が今の主流だ。 ネット通販はレンズを通して見ることで商品を手に取って確認できるし、家具などのインテリアは現物を買わなくても部屋に配置することが可能になっている。服だって試着することができるのだ。デザインやコンテンツを作成するときは、声で命令するのは効率が悪いので「リング」というポインティングデバイスを使用して作業を行う。昔のマウスと同じようなものだと想像してほしい。

昼休み

目に見るものがネットワークを通じて瞬時に分析されたりIoTのセンサーを使い、場所や状態を特定することで、モノや情報をシェアできるようになるでしょう。

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昼食はテイクアウトでWSで済ませることも多いが、なるべく気分転換で外食するようにしている。行きつけのお店が何件かあるが体重のことも気になるのでサラダのランチにしよう。空席状況がネットからリアルタイムで確認でき完全予約制になっている。まだ席が空いているようなので予約した。移動は徒歩以外に共有の自転車、バイク、自動車が近くにあれば利用することもある。ネットから簡単にレンタルできる仕組みになっている。50m以内に自転車が2台あるので、そのどちらかを借りることにした。 お店に到着してレンズの指示に従って予約した席につく。食事のエネルギー計算はレンズを通して画像解析でやってくれる。サラダは200kcalと表示された。食べ終わったら、そのままお店を出るだけでお金は自動支払いになっている。

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WSに戻るとメッセージが入っていた。チームメンバーでミーティングをするらしい。スケジュールを共有しているので必要であればすぐにメンバーを招集できる。ミーティングといっても参加者全員に会うわけじゃない。海外など離れた場所にいるメンバーはレンズに映し出されるホログラムとして参加する。現実と仮想の融合は、かなりクオリティが高い。開発中のコンテンツを現物のように持ち寄って手に取り説明できるのだ。 アメリカ人のメンバーがまた面白いものを持ってきた。大きな風船に見立てた仮想オブジェクトを部屋に放ったのだ。 ミーティングそっちのけでしばらく間バレーボール大会になってしまった。そういったユーモアたっぷりなところは、お国柄なのかもしれない。

定量化されたヒトやモノは、場所や時間、国境さえも超えて共有、共感できる時代になるでしょう。

定量化されたヒトやモノは、場所や時間、国境さえも超えて共有、共感できる時代になるでしょう。

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WSに戻るとメッセージが入っていた。チームメンバーでミーティングをするらしい。スケジュールを共有しているので必要であればすぐにメンバーを招集できる。ミーティングといっても参加者全員に会うわけじゃない。海外など離れた場所にいるメンバーはレンズに映し出されるホログラムとして参加する。現実と仮想の融合は、かなりクオリティが高い。開発中のコンテンツを現物のように持ち寄って手に取り説明できるのだ。 アメリカ人のメンバーがまた面白いものを持ってきた。大きな風船に見立てた仮想オブジェクトを部屋に放ったのだ。 ミーティングそっちのけでしばらく間バレーボール大会になってしまった。そういったユーモアたっぷりなところは、お国柄なのかもしれない。

退社後

ゲームの世界では当たり前のことが、リアルの世界でも起こると予想しています。

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仕事は定時に切り上げるように心がけている。今日はお酒を飲みたい気分なので遠回りして帰ることにした。さっきすれ違った女性は、知り合いの娘さんだったようだ。友達登録している人の家族は頭の上に黄色い文字で「○○さんの娘さん」と表示されるようになっている。リンクしていない人は、視界の隅にハンドルネームでリスト表示される。「知り合いかも?」の表示。以前知り合いだった女性が近くにいるようだ。今はもう知り合いでもなんでもないので早々その場から退散することにした。

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ネットゲームで知り合った友人に連絡して居酒屋で待ち合わせをした。実際に会うのは初めてだ。声は聞いたことがあるのだが、ハンドルネームしか知らない。なので、まずはお互い自己紹介。趣味の話で大いに盛り上がった。想像通りの面白いヤツだった。アルコール量はレンズが体調に合わせてアドバイスしてくれるが調子にのって少し飲み過ぎたようだ。 あっという間に時間が過ぎ、実に楽しい夜だった。また飲みに行こうと約束して友人と別れた。

IoTが当たり前の未来。デジタル世界の繋がりが、そのまま現実世界の繋がりになるのでしょうか。

IoTが当たり前の未来。デジタル世界の繋がりが、そのまま現実世界の繋がりになるのでしょうか。

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ネットゲームで知り合った友人に連絡して居酒屋で待ち合わせをした。実際に会うのは初めてだ。声は聞いたことがあるのだが、ハンドルネームしか知らない。なので、まずはお互い自己紹介。趣味の話で大いに盛り上がった。想像通りの面白いヤツだった。アルコール量はレンズが体調に合わせてアドバイスしてくれるが調子にのって少し飲み過ぎたようだ。 あっという間に時間が過ぎ、実に楽しい夜だった。また飲みに行こうと約束して友人と別れた。

IoTが単身世帯には、やさしい未来を提供してくれるかもしれません。

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家の半径100m以内に近づくとKeiが明かりをつけてエアコンで部屋の温度調整をして待っていてくれる。 朝に注文したパンをコンビニで受け取り、ついでにビールを買い家路に着く。家の鍵は自動で解除。Keiが「おかえりなさい」と声をかけてくれる。

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シャワーを浴びたあと、レンズを外しヘッドマウントディスプレイを装着。ビールを飲みながらVRシアターを鑑賞する。映画は画面を見る形から、シーンのエキストラの位置で“目撃”する形に進化した。例えばジャングルのシーンだとシマウマが自分の上を飛び越えたりする。うかうか居眠りもできない。時代劇では本当に刀で切られそうな感覚を味わうことができる。あまり長時間見ると疲れるし夜更かしは身体によくない。そろそろ寝ることにするか。

仮想と現実の融合。その橋渡しをIoTが行っています。

仮想と現実の融合。その橋渡しをIoTが行っています。

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シャワーを浴びたあと、レンズを外しヘッドマウントディスプレイを装着。ビールを飲みながらVRシアターを鑑賞する。映画は画面を見る形から、シーンのエキストラの位置で“目撃”する形に進化した。例えばジャングルのシーンだとシマウマが自分の上を飛び越えたりする。うかうか居眠りもできない。時代劇は本当に刀で切られそうな感覚を味わうことができる。あまり長時間見ると疲れるし夜更かしは身体によくない。そろそろ寝ることにするか。